雑学2

■NGOと溝掃除


以前、朝日新聞に掲載された嘉田由紀子女史(滋賀県立琵琶湖博物館総括学芸員) の記事を紹介しよう。
環境問題をどう考え、どう行動するかをうまく捉えた話だと思う。 『最近、ある人から相談を受けました。「毎月自治会で溝掃除をしているが、 出てこない人がナホトカ号の油流出事故でNGOとして手伝いに行ったという。 どう考えたらいいのか」と。』
ここで重要なのは、「行動の善し悪し」ではなく、相談した人が言うように「どう考えたらよいか」 ということである。ナホトカ号へ行った人が毎月の溝掃除に参加していたかそうでなかったかなどの 詳細は別問題として考える。
環境問題を考える時、地球規模的問題点、例えば地球の砂漠化や地球温暖化等が挙げられる。 その問題点の改善・保全を行おうとNGO活動を行うとすると、その自然と直結したところで 生活を営んでいる人々を考慮しないわけにはいかない。
更に女史は、『アフリカのマラウイ湖で今、国際協力事業団の支援で共同研究をしています。 そこでは、生物の多様性を守ろうと政府が保護区を設定したため、漁業者が漁業から 締め出されている部分があります。温暖化、生物の多様性といった問題もこうした生活現場と 密接に関わっています。』と言う。場合によれば、その人たちの暮らしを犠牲にする事に なるかもしれない。これは、自然を守るか、人間を守るかの二者択一的な行為に結びついている。
一方、環境対応のもうひとつの行為として、身の廻りで出来るところからやろうという考えがある。 例えば、家の中の節電やゴミの分別等があげられる。しかし、このやり方では CO2削減等は間に合わない。そして、地域の生活に合わせた環境対応は前述の地球規模の 対応から見れば前述のアフリカのマラウイ湖の人々の話の逆になり、湖の保全はなされない。 このように環境問題を考える事は矛盾した対応を迫られる事になる。
どうすればよいか。
『(地域で考え、地球規模で行動しよう)が現実的と思います。』又、『地球温暖化も 私たちの暮らしの積み上げなんですね。』と女史は続く。「地球規模の視点で生活を営む」 又は、その逆で「生活の視点で地球規模の問題に取り組む」という対極側の視点を持ちながら 行動する必要がある。
「エネルギー消費量を減少するために人間の消費量や生産量を減らす」という考えもあるが、 生活レベルを江戸時代に戻す事も不可能である。何らかの行動が必要である。地球規模か地域かの ではなく、NGOとしての組織でも溝掃除のコミュニティであってもよいが、両方の要素を 兼ね備える必要があると考える。
「どう考えたらいいのか」と質問した人がすでに答えを出している。
ナホトカ号と溝掃除をどう考えるかという「問」そのものに、彼(彼女)は地球規模の視点と 地域規模の視点の両方が自分の意識の中に存在しているわけで、あとは行動すればよいだけである。 ナホトカ号のもとに行った人はすでにその気持ちでNGOに参加したと考えたい。
建築というものが、建材の製造から廃棄までのエネルギー問題、生活のあり方等、 地球規模から地域まで関わる事を思えば、この「NGOと溝掃除」の話は非常に重く重要である。
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