雑学4

■木材を愛する


今、考えていることに「木材の良さ」がある。
住宅を建てる時、耐震性や耐久性、断熱性や温熱環境などを考慮に入れながら、 住む(使用する)人々の多様な要求を満たそうとする。もし、耐震性や温熱環境 など物理的性能だけを満たそうとするなら、鉄筋コンクリート造(RC造)の方が 理にかなう。建設や解体の時に使用するエネルギーは木造に比べればはるかに多く 使うが、住んでいるときに使う生活エネルギーや通常や地震時の補修費用など、 長期的総合的に考えれば可能性はあるように思う。問題は別の要求、すなわち住む 人々の好みや価値観である。

「落ち着く」や「安らぐ」など心情的な言葉を柱や梁が 見える木造住宅のときによく聞く。木造住宅はRC造にない良さ(安らぎ)があるのだろう。 では柱が壁の中に隠れた大壁式の木造住宅ではそうではないのだろうか。 反対に外材で出来た集成材の柱や梁が見える住宅はどうだろうか。 さらに言えば合板の2×4住宅は。なかの細胞が壊された高温人工乾燥木材の住宅では どうだろう。腕の悪い大工が建てた住宅は?など木造住宅といってもその種類は多い。

又、木材の加工面から見ると大工さんの技や道具も異なるし、プレカット技術も少しずつ 発展している。構造材は部材の大小で力強くたくましくあり、造作材は木肌や節の あり方でしなやかでやさしく見える。そして杉材のヤング係数も数多く測定され、 割れや腐れなども含めて性能がかなりわかってきた。木造の構造計算で経済的な木材の 選択が可能になってきている。このように住宅に使用される木材は変ってきているが 木材の良さに対する思いも変ってしまったのだろうか。日本人は木材の肌が好きである。 これは地理的に多くの木材を有した日本人の歴史なのか。それはわからない。 割れても傷がついても又節があろうがカビで黒くなっても木肌が好きである。それも自然のままの木肌である。

冒頭の「落ち着く」や「安らぐ」が感じられる住宅とはそういった自然の ままの木材が「木材らしさ」として存在している住宅であろう。単に木材が見えているとは 違う。木材が大地で育ったと考えれば木材をより自然に近い形で利用することが 「木材の良さ」を引き出す方法であろう。自然乾燥の方法や大工さんの気持ちのある 手刻みや構造用金物でより締め付けない方法などが木材の良さを残した住宅といえるのでは なかろうか。その良さが木材への愛着や思いやりを生み、木材を愛することにつながるだろう

今、地球温暖化防止対策で森林によるCO2吸収の3.9%を含めて12%の削減を しなければならない。そのために木材の輸送にかかるエネルギーを削減する ウッドマイレージや地産地消なども取り入れなければならない。そして、 ご存知のように日本の木材は価格面で外材に圧されて切るに切り出せなくて悲鳴を あげているなか、去年は台風や水害などの自然災害の影響で杉や桧などの植林が倒され、 流されさらに被害を受けている。地域によっては山ごと流されたと聞く。

このような状況のなか、木材を利用するときの必要なことは日本の森林の荒廃や エネルギー問題の取り組みだけではなく、外材の集成材ではでない木材の良さを 残すことだろう。現在、日本の山には戦後の拡大造林で杉が余っている。 それを活用していくことが重要であるが山村の過疎や高齢化対策、林業家の経営意欲、 流通や消費の一体化など多方面からの取り組みが必要である。そのひとつとして、 ほどほどに物理的性能を満たし快適でやすらぐ住宅をつくりそこから「木材が好きだ」 「木材を愛する」気持ちを育てることが重要である。そのために特別な技術や修練が 要るわけではない。が、われわれ建築家が木を愛し、木を活かすことをしなければならない。 今のまま30年や50年、自然に遠い木材に慣れ親しんだとなれば話は変る。 「木材が好きだ」「木材は安らぐ」は無くなっていく。

「背比べ」を今の家で復活させ「木材は傷つきやすい」を「木材の良さ」と思うのは 無理だろうか。
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